15 The Royal Book of Oz（２）

３人の息子たちは、かかしにまとわりついては献身を示しはじめる。垣根の陰で彼らの企みを聞いてから数時間後のことだ。かかしはそれまで自分の年について考えたことがなかったが、息子たちがあまりに「お体は大丈夫ですか」「医者を呼びましょうか」などというので、ミョーな気がしてくる。そこで、とんぼ返りをして元気なところをアピールするが、それを見て息子たちは渋い顔をし、退席してしまう。かかしもまたHappy Toko になにやら耳打ちする。
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場面は変わって、銀の山の暗い洞窟の中で巨大な魔法のなべをかきまわす魔法使い、the Grand Gheewizard。彼の後ろでは銀のうろこの年とったドラゴンが石炭を飲み込んでいる。そこへ姿を見せる末王子。「明日の朝までには薬はできあがりますから」と言い、老魔術師はさらに鍋をかき混ぜる。
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かかしは相変わらず宮殿の大裁判室で忙しくしていたが、なにやらいつもとは違う雰囲気を感じる。３人の息子たちとChew Chew、Mugwump将軍がことあるごとに頭を寄せ合っているのだ。「なにか起こりそうだぞ」とかかしはHappyにささやく。とそのときChew Chewが立ちあがり、「皆に知らせがある」と言い出す。「偉大なる王Chang Wang Woeは、明日本来の姿にお戻りになる。魔法使いのGheeWizardの発見した薬により、かかしの姿から解き放たれるのである。オズのかかしはこれで見治めとなる。明日には元の我らの偉大なる皇帝のお姿となるのだ」と。おどろき慌てるかかし。そこへまた「私からも知らせがある」と年長の息子が立ち上がって言い出す。「我らが父の復元を祝って、我らは魅力的で愛らしいOrange Blossom姫を花嫁としてお迎えした」と。かかしは再婚するつもりはないと叫ぶが、誰も彼の言葉に気を留めていなかった。Orange Blossomが王子にエスコートされて入ってくる。彼女はGolden Islandsの王の妹だという。かかしはついに決心する。いまこそ行動を起こすときだ。今夜、宮殿を抜け出し、オズへの道を探すのだ。その晩、宮殿は皇帝の結婚とGheewizardの発見の話題でもちきりだった。かかしは国会議事録を読むふりをしながら廷臣たちが退出するのを待った。ついに最後の一人が退出し、Happy Tokoだけが残された。かかしは計画を立て始める。「生身の人間になるよりは藁人間のままでいたいよ。世界の皇帝となるよりもただのオズのかかしであるほうがいい。彼らは私の息子かもしれないが、あいつらの願いは私の死、それだけだ。友人たちのところにもどって−」かかしがそこまで行った時、突然大きな奴隷がかかしを後ろから掴み、もう一人の奴隷がHappyを捕らえた。「しっかりと結わえておけ」年長の息子がやってきて言った。「この豆の柱に結わえておけ。おやすみなさい、かかし父上。明日には元のお年を召したお姿に戻れますよ。そして、何年か先にはこの私がSilver Islandsの皇帝となるでしょう」かかしとHappyはもがいて逃げようとするが、どうにもならない。かかしは元の姿になってしまえば年齢的にもオズへの旅は無理だろうと嘆き悲しむ。Happyはそんなかかしをみて「オズの魔法使いからもらったあなたいすばらしい脳ミソはどうなったんですか？！」と励ます。かかしは一生懸命頭を働かせて考える。

かかしが大変な目にあっている間、ドロシーたちも冒険を続けていた。ウィンキーの荒野を３日間もさまよっていたのだ。Sir Hocusがみんなを元気づけるために即興で歌を歌う。ほどなく自分たちが＜死の砂漠＞のすぐそばにいることに気がつく。エメラルドの都とは全く逆のほうに進んでいたのだ。そこで、彼らは感じのよいComfortable Camel(Camy)と何事にも疑り深いDoubtful Dromedary(Doubty)の２頭のラクダに出会う。砂嵐に流されてここまで来てしまったのだと言う。ドロシーたちは２頭の背負っていた荷袋から食べ物をわけてもらう。かつては御者の命じるままに進んでいればよかった２頭だが、御者のいない今ではどこにいくというあてもなく、たださまよっているのだと言う。Sir Hocusを新しい主人と慕うCamy。一行はラクダたちが背に積んでいた荷物のおかげでお腹を満たし、心地よいクッションで休息を取る。Sir Hocusがラクダの、ドロシーがライオンの背に乗り、一行は出発する。旅の間にドロシーがかかしについてラクダに説明する。やがて一行は"WISH WAY"という標識のある道路をみつける。Sir Hocusの「前進あるのみ」（？）の言葉に従い、みんな一列に並んでその小道に入っていく。

しばらく順調に進んだ一行だが、ドロシーはDoubtyがいないのに気づく。騒ぎ立てるCamyの背からSir Hocusが振り落とされ、「もし私が鳥だったら…」と文句を言ったSir Hocusの姿が消え、あとにはカラスが一羽。ますます嘆くCamyが「こんな道くるんじゃなかった」と言ったとたんCamyの姿までもが消えてしまう。ライオンの耳に止まった黄色い蝶の「どうかな？それは疑わしいな」という声を聞き、跳びまわるカラスを見てドロシーが「Sir Hocusが元の姿に戻りますように」というと次の瞬間、そこにSir Hocusの姿が。合点がいったライオンもすぐに「Camyが戻るようにDoubtyが元の姿になるように」と願いを唱える。そして熟慮の結果ドロシーは一つの願いを唱える。願いが唱えられるやいなや、地面が裂け、一行を呑みこむ。

一行は薄暗い大きな広間の堅い床の上で、みんなそろって無事なことを喜び合う。太った小さな男に見つけられる一行。そこへかかし当人の声が聞こえる。小さい男はHappy Tokoだったのだ。ドロシーは喜びのあまりかかしに駆け寄るが、かかしの発する言葉を全く理解できないことに困惑を覚える。Happyに灯りをともさせ、部屋を明るくしたかかしは手を広げて何事か言いながらドロシーに走り寄るがその言葉はライオンにも理解できない。が、やがてかかしも再びオズ語を話すようになる。ドロシーたちはSir Hocusをかかしに紹介し、かかしは今までの経緯や現在自分が置かれている状況をドロシーに説明する。Happyがなんとか縄をぬけ二人して逃げ出そうとしていたちょうどそのときに、ドロシーたちが落ちてきたのだ。かかしが朝には年老いたChang Wang Woeになってしまうと聞いて「かかしのいないオズなんて想像もできない」と悲しむドロシー。養子縁組していとこになろうと考えていたが、かかしがここで本当の家族を見つけたのならそれも無駄な考えであったと、元気をなくすライオン。しかしかかしが「ここの皇帝でいるよりオズのかかしでいるほうがいい」というのを聞き、「みんなでオズに帰ろう！」と心を一つにする。かかし１錠だけムシノスケ教授の言語錠を持っていたのを思い出し、Happyに飲ませる。Happyもみんなと会話ができるようになる。「もうすぐ夜が明けますよ！」と忠告するHappy。彼らは小さいボートで逃げようと計画していたのだが、こんなに大勢を乗せるボートを誰にも知られずに出せるはずもなかった。ドロシーは「みんながエメラルドの都に戻れるようにと願えばよかった」と悔やむ。結局、豆の柱を上っていけば長い道のりではあるけれどもいつかはオズにつくはずだということになり、ドロシーを先頭にかかし、Happy、Sir Hocusの順に豆の茎を上り始める。が、とたんに、しゃがれた叫び声が広間中に響いた。

声の主はCamyだった。「戻ってきてくださいご主人様！」「静かに！」とライオン。「ドロシーやほかのみんなをぼくらのせいで捕まらせるわけにはいかない」とラクダを諭すが、ラクダは聞き入れない。そのやりとりをきいたドロシーは動物たちのことを忘れていたことを恥じ入る。かかしがバランスを失って落ちたこともあり、一行は再び広間に下り立つ。他によい案も思い浮かばないので「せめて残りの時間楽しく過ごそう」（？）というかかしの提案で、王座の周りに集まり、お互いの冒険を話して聞かせる。そこでかかしはドロシーへのみやげにと思って取っておいた扇で侵略者を防いだ事を話し、扇と、いっしょに取っておいたパラソルをドロシーに見せる。太陽がついに上り、太鼓やトランペットの音が聞こえ、王座の前へと行進してくる。

ドロシーは見事な行列がやってきて、かかしにひれ伏すのを見て驚き、「ほんとにこれを捨てても言いのね？」と念を押す。Chew Chewはかかしの周りのドロシーたちを見て驚き、年長の息子が「あいつらはなんだ？」と騒ぎ出す。ドロシーは息子達の邪悪な顔や愚かな孫達を見て、かかしの決断を疑うことをやめる。かかしはドロシー達を紹介し、かかしのことを愛している民衆達は歓迎の声を上げる。しかし、３人の息子達は渋い顔。かかしは民衆に「息子に王位を譲り、自分自身はオズへと帰りたい」と告げるが人々は納得しない。「我らの偉大なる父。王子はあなたがご先祖の元に旅立たれた後、王になるのです。それは決して今ではありません！」と。CHew Chewは「かかし陛下は何を言っておられるのかご自身お分かりでないのだ。元のお姿に戻られれば−」と民衆をなだめる。「早く儀式を！」と民衆達。そこへGeewizardがドラゴンを引き連れて登場。Sir Hocusはドラゴンを見るなり、「やっと出会えた！」とあっという間に剣で殺してしまう。広間は大混乱に陥るがその隙をつくまもなく年長の息子が「やつを罰するのは後でもできる」と言い、民衆も「儀式を続けよ」と叫ぶ。絶体絶命のかかしは「オズマによろしく」とドロシーに言い残す。Geewizardはかかしに近づく。Sir Hocusやライオンも魔法には太刀打ちできない。Geewizardは「一歩でも動いたら干しスモモに変えるぞ」と脅しをかける。かかしに魔法の水の入った花瓶をふりかざす。ドロシーは思わず両腕を振り回し、その拍子に手首に掛けていたパラソルが開いてしまう。すると、ドロシーの身体はどんどん空へと昇っていく。かかしたちは魔法使いのことをすっかり忘れ、ドロシーを救おうと半狂乱になる。「今がチャンスだ！」と王子は言い、Geewizardは呪文を唱え、花瓶をかかしの頭に投げかけた。しかし、彼の手から花瓶が離れる前にドロシーがまさにその真上に落ちてきた。花瓶は方向を変えて飛んでいき、３人の王子達の頭の上にザバンッ！王子達は銀色のブタといたちに姿を変え、キーキー鳴きながら庭の方に出て行ってしまった。Geewizardもかかしの命令により捕らえられる。あくまでもかかしとの結婚を望んでいたPrincess Orange Blossomだがライオンのいたずらで失神してしまい、これ幸いと家来達は姫を籠に乗せたまま連れ帰ってしまう。

かかしは誰にこの国の政治を引き継がせるべきか悩む。いっしょに考えていたSir Hocusが「Happy Tokoより他にいないでしょう」と提案し、かかしも同意する。「これでいっしょにオズに帰れるわね」と喜ぶドロシー。置いていかないで下さいと訴えるHappyをみんなで説得する。最後にはHappyも王位を継ぐことを了承し、最善をつくすことを約束する。かかしは国民の前で改めて別れを告げHappyを次の王として紹介する。そして、オズから来た一行は、動物たちも含めみんなロープで結び、その先をドロシーの持つ魔法のパラソルの柄に結びつける。ドロシーがパラソルを開くと、一行は浮かび上がり、やがて見えなくなる。

空に浮かび上がった一行はまもなく暗いトンネルにさしかかる。かかしがおちてきたトンネルの中を、ドロシーはパラソルを操り、みんなが壁にぶつからないよう最大限の努力を払うが、全くぶつからないというわけにはいかなかった。ぶつぶつ言うラクダたち。一度何かにぶつかってパラソルが半分閉じてしまい、一行はロープで結ばれたまま落ちかけるが、ドロシーがすぐに豆の柱を掴みパラソルを再び開いて事なきを得る。前にもましてより速く舞い上がる一行。かかしが叫ぶ。「もう地上についたに違いないぞ！あっ誰かが入り口を閉じてしまっている！」

Sir Hocusが剣で穴を開け、一行は暗いトンネルからオズの空へと飛び上がる。ドロシーは見慣れたマンチキンの景色を見下ろして喜ぶ。パラソルを少しずつ閉じ、一行は豆の柱の近くの干し草の山の上に無事下りる。「オズマに頼んでここはきちんと閉めておいてもらおう。誰かが間違って落ちないように。私のように−もうオズを離れるのは二度とごめんだ」とかかしが言う。「でもそのおかげでSir HocusやCamyやDoubtyにも会えたんだから」とドロシー。Sir Hocusが一粒の小さな赤い豆を口に入れる。干し草の上に飛び下りる前に豆の柱から摘まみとってあったのだ。と、Sir Hocusの肩から緑の枝が芽を出し、ぐんぐん伸びて、Sir Hocusはあっという間に空高く突きあげられ、見えなくなってしまう。みんなはパニックに陥る。かかしはお百姓の家に走り出し「斧を借りてくる。それで豆の柱を切り倒そう」と言う。しかしライオンが「彼をばらばらにする気か？」と止める。かかしが「パラソルだ！」と叫びドロシーが広げる。浮かび上がる前にかかしも柄に飛びつかまり、二人でいっしょに空へと昇っていく。後に残されたライオンとラクダたちはどうしようもなく陰鬱な気分になるが、「あれ？あの落ちてくるものは何だ？」…と思うまもなく、動物たちはすごいスピードでエメラルドの都の方角にすごいスピードで飛ばされていく。

ドロシーとかかしはほどなくSir Hocusに追いつく。かかしはSir Hocusの剣で豆の柱を切ろうとするがSir Hocusが「背中の中に根を張っているんだ。豆を切れば私も切られる事になるんだ」と止める。しかたなくかかしがSir Hocusを掴み、３人でいっしょにエメラルドの都まで飛んでいくことにする。オズマになんとかして助けてもらうのだ。ドロシーのポケットから小さな扇が滑り落ち、下で見ていた３匹の動物たちの上にちょうど落ちていく。動物たちが見たのはこれだったのだ！３人は飛びつづけ、エメラルドの都の花壇の上に下り立つ。しかし手を離すとSir Hocusの豆はまた上に伸びていこうとするので手を離すことができない。宮殿からは少し距離があるところに下りたので、ドロシーたちがここに下りたことは誰も気づいていない。呼べど叫べどオズマもトロットも誰も気づいてくれない。Sir Hocusは涙を浮かべ、手を離してくれるように頼んだが、ドロシーとかかしは力の限り押さえつづけた。もう３人とも空へ再び舞い上がるしかないのかと思われたそのとき、オズの魔法使いがひょっこり振り向いた。慌てて駆けつけるお馴染みのオズの仲間たち。チクタクとブリキの木樵りがSir Hocusの両腕を押さえる。豆の柱は一気に赤い花を満開に咲かせ、花を落として枝は消え去ってしまう。思いがけない出来事に喜ぶ人々。魔法使いが「ちゃんと説明してくれ。ライオンと２頭の見知らぬ獣が空中を飛んできて３階の窓にひっかかったと思ったら次はおまえさん達だ」。そこでドロシーは魔法の扇のことを思い出す。オズマに魔法のベルトを借り、ドロシーは願いをかける。「魔法の扇が閉じますように、そして私の所に戻ってきますように」３頭の動物たちが落ちた大きな音がし、ドロシーのポケットに扇が戻った。「オズを気に入るかどうか疑わしいな」とDoubty。Sir Hocusに再び会えて泣きじゃくるCamy。ようやく全ての冒険が終わった。これまでのことを交替で話すドロシーたち。ムシノスケ教授は一人、話の輪を抜け自分の研究室に戻る。「王家の本」を広げ、新たに「皇帝かかし陛下−Silver Islandの前皇帝であり最高支配者」と書き足す。一同は＜魔法の絵＞でHappy Tokoの様子を見る。楽しそうな様子がうかがえ安心する。無事に戻れたこと新たな友人を得られたことなど、喜びあいながら、話は終わる。